漆黒の瞳の行く先は 【15】
「あーねーきー」
洗面所から、シャワーを浴び終えた陸が出てきたようだ。肩からタオルをかけてる。
陸は髪の毛からぽたぽたと雫をたらしながら、あたしに声をかけた。
「髪の毛ちゃんと拭いてから出てこいっつーの」
そう小さく呟くと、近づいてくる陸からタオルを奪い取る。
呆気に取られた顔の陸。
たくさん水分を含んでる漆黒の髪の毛にそれをあて、そのままごしごしとこすった。
「床が濡れたら掃除するのあたしなんだから。バカ。いっつも言ってんじゃん」
しばらく、頭をタオルで拭く音だけが響いてた。
こんなこと、日常茶飯事だったし、特に何も考えずにやってた。
床拭くの嫌だし。
違ったのは、陸の態度。
いつもだったら、「あーもー、うぜーなー」とか必ず減らず口を叩くのに。
今日は、何も言わなくて。
ただ、黙ってあたしを見つめるだけで。
―――――――どうして?
大体拭き終わった頃、陸は遠慮がちに声を発した。
「…ゴメン。もういいよ」
「そ?じゃあ、はい」
手にしていたタオルを返す。
それを受け取った陸は、あたしに背を向けると、2階の自室へと向かった。
「メシになったら呼んで」
陸は振り向かずにそう言った。
| 固定リンク

コメント