漆黒の瞳の行く先は 【13】
『好き』という言葉が昔から嫌いだった。
そんなうわべだけの言葉にどうしてみんな騙されるんだろうってずっとずっと思ってた。
でも、『好き』の気持ちに気付かされたらそれは誰にも止められない。
そんな事、あたしはまだ知りたくなかったのに。
*
「陸…?熱でもある?」
「…は?」
「いや、だって…」
あたしはどうしても信じられなかった。
陸があたしに対してそんな気持ちを抱いていたなんて。
どちらかといえば嫌われてると思ってたし。
「どうしてそんな事言うの?からかってんの?」
それに、陸はあたしの弟だ。
いくら義理とはいえど、あたしの弟だって事には変わりがない。
訊いても、一向に何も切り出そうとしない陸。
不気味なほど静かな雰囲気が漂いだした頃、電話口の向こうで、陸は軽く嘆息をついた。
「…ゴメン。もう切んなきゃ。そろそろ寝ないといけねーし。おやすみ」
彼はあたしの質問には答えなかった。
それどころか、本当に電話を切ろうとしてるようだ。
あたしは慌ててそれを止めようとする。
「ちょっ…」
「あー、それから、明日からは電話しなくてもいいから。電話代もかかるし。
俺がいない間、しっかり戸締りしてから寝ろよ」
ブツッ。
呆気ない終わり方だった。
本当に切られた。
ディスプレイに残るのは、26分48秒という通話時間のみ。
耳にはツー、ツー、という無情な音が響き渡ってくる。
あたしはパチンとケータイを閉じ、その場で膝を抱え込み顔をうずめた。
「…意味わかんない。人に告っときながら、変なタイミングで切るなっつーの」
きっとアイツはバカだ。
あんだけカッコいいのに、よりにもよってあたしなんかを好きになるなんて。
一番好きになっちゃいけない相手だって事ぐらい、わかってるはずなのに。
「バーカ。いつか東京湾に沈めてやる」
声はあたしの体に邪魔されてその場にこもった。
行き場のない、モヤみたいに。
それはまるで、消化しきれない気持ちが、実体化されたかのように儚かった。
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