漆黒の瞳の行く先は 【17】
どんな時でも可愛かったあたしの弟。
「お姉ちゃん」とあたしの服の袖を引っ張りながらずっと後をついてきて。
浮かべた笑顔は消えなくて。
そんな弟が愛しくて愛しくてたまらなかった。
それなのに。
いつからかな。
あなたの瞳があたしを見るときの視線が変わったのは。
―――――それでも、あたしは、いつだって。
*
「陸、離して」
「やだ。何で」
「…ご飯、食べるから」
「何だよそれ」
そう言ってちょっとだけ笑った陸は、あたしの肩に自分の額を乗せると溜息をついた。
あたしの腕を掴んだまま、一向に離してくれる気配は無い。
寄せ合った体が、熱くて熱くて。
もうやだ。離して。これ以上あたしを混乱させないで。
「ねぇ、陸。離してって言っ…」
「ちょっと黙って。聞いて」
あたしの言葉を遮った陸は、ゆっくりと顔を上げた。
火照った頬。苦笑いのように弱々しく笑う表情。
そのどれもが、あたしを釘付けにさせて。
「少しだけで、いいから」
そんな顔しないで。
そんな目であたしを見ないで。
どうしようもなくなる。どうすればいいのか分からなくなる。
「―――…っ」
握られた腕から伝わってくる。
目、そらさないで、って。ちゃんと見て、って。
「…ずるいよ…!」
もう何も言えなくなった。
溢れてくるのは涙だけで。陸の顔がゆがんで見えた。
――ああ。
陸の目を見つめるだけで。
たまらなく切なくなってしまう、あたしは、きっと。
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